にょほほ電鉄−車両−小田急電鉄
小田急電鉄は、新宿を起点に世界的観光地である箱根を結ぶ鉄道。
路線の開業は、大手私鉄では、東京地下鉄と並んで遅い1927年
であるが、この年に本線である小田原線を一気に全通。また戦後に
は各社に先駆け特急を復活させ、1957年には、歴史に名を残す
名車・3000形(初代)を登場させるなど多方面から注目を浴び
た。沿線住宅街の印象とも相俟って、イメージの良い路線である。
長年の悩みの種であったラッシュ時の慢性的な徐行運転は2018
年の複々線化事業の完成により大幅に改善された。
駅名標 小田急電鉄
駅名標は、通勤型車両のイメージであるブルーのストライプが入る
デザイン。和文書体は「新ゴ」であるが、天地方向を縮小した平体
となっている。欧文書体は高速道路の案内標識として採用されつつ
あるVialogを採用。ただ、過去の駅名標に比べて凝りすぎた
デザインで、やや見づらいのが残念。

和文書体:新ゴ
欧文書体:Vialog
過去の駅名標は国鉄風のデザインであったが、複々線化による駅改
築の頃から、画像のようなタイプを使用し始めた。現在は上記のも
のに変更されつつあるが、未だ多くの駅で残存する。また後期には
韓国語の表記が加わったものも登場した。
※矢印を画像にかざすと後期タイプの駅名標へ。

和文書体:初期・ゴシック4550、後期・新ゴ
欧文書体:Helvetica

注意喚起用ドアステッカーは、ピクトグラム風のシンプルで分かり
やすいデザインである。注意文や詳細デザインは若干の変化がある
ものの、基本デザインは数十年以上変わっていない。

■70000形(2018年)

7000形の置換え、また複々線化の完成による新時代の小田急の
シンボルとして登場した車両で、GSEの愛称を持つ。「G」とは
Gracefulの略で「箱根につづく時間を優雅に走る」をコン
セプトとする。ローズバーミリオンが印象的な車体は、将来のホー
ムドア設置を考慮し、従来の連接構造をやめ一般的なボギー台車構
造となった。2018年3月に営業運転を開始した。
■60000形(2008年)

地下鉄千代田線直通用として登場した車両。MSEの愛称を持つ。
「M」とはマルチの意で、日本初の地下鉄直通特急としてマルチに
活躍する様を表す。車体は地下でも映える色として、フェルメール
ブルーの塗装が施される。地下鉄北千住発着のホームライナーの他
休日には「メトロはこね」として、箱根湯本まで乗り入れる。また
2012年からはJR御殿場線直通特急にも使用される。鉄道友の
会「ブルーリボン賞」受賞、また「グッドデザイン賞」受賞車両。
■50000形(2005年)

箱根輸送の強化と10000形置換えのため登場した車両。VSE
の愛称を持つ。「V」とはヴォールト(ドーム型天井の意)の略。
展望室車両の人気は依然根強いが、10000形は高床構造で段差
があるため、バリアフリーに対応できず、新車両の登場となった。
ドーム型の高い天井や落ち着いた配色の室内で居住性は高い。鉄道
友の会「ブルーリボン賞」、また「グッドデザイン賞」受賞車両。
■30000形(1996年)

2代目ロマンスカー3100形(NSE)の老朽化に伴い登場した
車両。EXEの愛称を持つ。通勤輸送にも対応すべく定員増を図る
ため、通勤車両と同様の20m級大型車となるが、伝統の展望席の
採用は見送られた。そのため観光客からの評判は良くなく、これが
影響してか、歴代のロマンスカー全てが受賞してきた、鉄道友の会
「ブルーリボン賞」も、この車両のみ受賞していない。ただし4両
+6両という分割併合ができるため、フレキシブルな運用が可能で
運用上は重宝される。「グッドデザイン賞」受賞車両。
 
■5000形(2代目・2020年)

小田急の最新鋭車両。8000形の老朽化に伴い登場した。「より
広く、より快適に」をキーワードに、車両構造は2000形以来の
拡幅車体を採用、前面形状は流線型としてスピード感を演出した。
車内には防犯カメラを設置、また車椅子スペースを各車両に設けて
いる。2020年3月に営業運転を開始した。
■4000形(2代目・2007年)

1000形に代わる、新たな地下鉄千代田線直通用車両として登場
した車両。JR東日本E233系の設計思想を採用し、側面形状は
E233系と同様のものとなっている。前面形状は、貫通扉を左側
に寄せた、小田急初の非対称形状。ストライプは、小田急伝統のブ
ルーとしながらも、ルリマツリ花弁の色を表現した「インペリアル
ブルー」という新色となった。
■3000形(2代目・2003年)

モーター抵抗のみで列車を停止させる純電気停止ブレーキを初めて
装備した車両で、スムーズな停車を実現した。車体形状は、従来の
小田急車両のような丸みを帯びた形状を採用せずに、簡素な直線的
デザインとなってしまったのが惜しい。当初登場の1次車は1.6
m幅のワイドドアを採用し、側面窓の形状も独特であったが、2次
車以降は標準幅(1.3m)の乗降扉となり、側面窓もJR東日本
のE231系に近い形状となった。
■2000形(1995年)

2600形の老朽化に伴う置換えと、ラッシュ時の乗降時間短縮を
目的に登場した車両。乗降扉幅は1.6mに拡大したワイドドアと
なる。一応1000形をベースとしているため、改造工事を施せば
地下鉄千代田線への乗入れは可能であるが、4000形が登場した
現在では、実現性は無いものと思われる。全列車が8両編成で各駅
停車や区間準急に使用され、速達列車に使用される事は殆どない。
「グッドデザイン賞」受賞車両。
■1000形(1988年)

9000形に代わる、地下鉄千代田線直通用車両として製造された
車両。鋼体には小田急初のステンレスを採用、登場時はアイボリー
色の車両群の中で異彩を放った。また小田急初のVVVFインバー
タ制御車両となる。なお異端車として、乗降扉の幅を2mに広げた
ワイドドア車や(詳細は後述)箱根登山鉄道直通用として車体色を
箱根登山車と同様の赤色とした編成も存在する。

■1000形ワイドドア車(1990年)

小田急初のステンレス車両である1000形は、1990年にラッ
シュ時の乗降時間短縮のため、乗降扉の幅を2mとした編成が登場
した。また実験的施策として、車内案内装置や跳上げ座席、また側
面窓の自動開閉装置の設置等が行われている。しかし肝心のワイド
ドアは効果が殆ど得られず、後に乗降扉の開口幅は2000形と同
様の1.6mへ縮小された。
※矢印を画像にかざすとワイドドアの画像へ。
■8000形(1982年)

18m級中型車体を持つ旧型車両の淘汰を目的として投入された車
両。9000形に続いて新デザインの前面形状となり、前面ガラス
を黒縁でまとめ、あたかも一枚窓としたデザインは秀逸。このデザ
インは後に各鉄道会社でも採用されている。近年は更新工事が行わ
れ、行先方向幕のLED化や、一部編成では制御装置のVVVFイ
ンバータ化も行われている。

■20000形(1992年〜2012年)

JR御殿場線直通急行(当時)である「あさぎり」の特急格上げと
共に登場した車両で、RSEの愛称を持つ。「R」とはリゾートの
意。小田急初の二階建て車両を連結、塗装もブルーとピンクのパス
テル調となる。鉄道友の会「ブルーリボン賞」受賞車。「あさぎり」
の運用縮小や老朽化に伴い、2012年をもって引退した。現在は
1編成が3両編成に改造のうえ、富士山麓電気鉄道で活躍する。
※矢印を画像にかざすと富士山麓電気鉄道8000系の画像へ。
■10000形(1987年〜2012年)

小田急の創立60周年を記念して製造された車両。HiSEの愛称
を持つ。「Hi」とはハイクオリティや、より良い展望を提供する
高床構造・ハイデッカーを表す。鉄道友の会「ブルーリボン賞」受
賞車両。一時期は小田急の看板車両として活躍したが、高床構造が
バリアフリーに抵触する事や老朽化に伴い、2012年をもって引
退した。なお、一部車両は4両編成に改造のうえ、長野電鉄で活躍
する。
※矢印を画像にかざすと長野電鉄1000系の画像へ。
■7000形(1980年〜2018年)

小田急初の、展望室付きロマンスカーである3100形に続き製造
された車両でLSEの愛称を持つ。「L」とはラグジュアリ(豪華
な)の意。室内はリクライニングシートが初採用された。1996
年にリニューアルが行われた際、10000形に準じたワインレッ
ド系の塗色となったが、後に元の塗装に戻されている。鉄道友の会
「ブルーリボン賞」受賞車。老朽化のため2018年10月をもっ
て引退した。
※矢印を画像にかざすとワインレッド塗装の画像へ。
■3000形(初代・1957年〜1992年)

新宿と小田原を60分で結ぶべく登場した車両。台車が連結器を兼
ねた連接構造や軽量車体など、新機軸を搭載し、速度試験において
は国鉄線上で実施するという異例の事態となり、この際に当時の狭
軌では世界最速の143キロを樹立、この結果に触発された国鉄が
新幹線開発に乗り出したという逸話がある。この偉業を称えるべく
鉄道友の会によって「ブルーリボン賞」が創設され、第1回受賞車
両となった。老朽化のため1992年をもって引退した。
■9000形(1972年〜2006年)

地下鉄千代田線との相互直通用に製造された車両。前面形状は乗入
れ先の営団(現・東京メトロ)6000系の奇抜なデザインに対抗
すべく、前面窓ガラスを上部まで引伸ばした斬新なデザインを採用
し、従来の小田急のイメージを大きく変えた。また側面窓は小田急
初の一段下降窓を採用。制御装置も界磁チョッパ制御となり省エネ
仕様とした。様々な新機軸が評価され、鉄道友の会より「ローレル
賞」を受賞した。1990年には地下鉄直通の運用を1000形に
譲るも引き続き小田急の人気車両として活躍したが、老朽化のため
2006年をもって引退した。
■5000形(初代・1969年〜2012年)

急行列車の長編成化と旧型車の淘汰を目的として投入された車両。
前面デザインは従来の通勤車と同様の形状、いわゆる「小田急顔」
を採用した最後の車両である。ただ塗色は従来のダークブルーとイ
エローから、アイボリー地にブルーのストライプという爽やかな塗
色が採用された。当初登場した4両編成は、側面窓が二段上昇式で
あるが、後に登場した6両編成は、9000形で採用され好評であ
った一段下降式に変更され、外観がスッキリした。新4000形の
投入により廃車が進み、2012年をもって引退した。
■4000形(初代・1966年〜2005年)

小田急初の20m級大型車として2600形が製造されたが、当時
は依然、18m級中型車体の旧型車両も多かった。そこで輸送力増
強のため、2600形と同等の大型車体に、旧型車両の走行装置を
流用して登場した車両が4000形。しかし、さすがに旧式の走行
装置である「吊り掛け駆動」では高速運転に厳しく、走行装置は後
に新性能化された。老朽化のため2005年をもって引退した。

■東海旅客鉄道・371系(1991年〜2014年)

JR御殿場線への直通特急「あさぎり号」が小田急・JR東海の共
通運用となるのに伴い、JR東海が製造した車両。性能や車内設備
等、基本性能は小田急20000形と共通であるが、デザイン等は
独自性が見られた。「グッドデザイン賞」受賞車両。2012年の
「あさぎり」運転区間縮小に伴いJR東海は「あさぎり」運用から
撤退。その後は臨時列車として使用されたが2014年を持って引
退した。現在は3両編成に改造のうえ富士山麓電気鉄道で活躍する。
※JR東海の車両ですが主に小田急直通特急として運用されたため
 この項にて紹介いたしました。
※矢印を画像にかざすと富士山麓電気鉄道8500系の画像へ。