にょほほ電鉄 - 路線 - 東京都交通局上野懸垂線・・・
上野懸垂線は、上野動物園の園内に敷設されたモノレール。路線長
は僅か300mで動物園内の路線という事もあり、遊戯施設と思わ
れている節があるが、実は東京都交通局運営の、れっきとした鉄道
路線。しかも日本初のモノレール路線という、歴史的な路線でもあ
る。この項では開業50周年を迎えた、特色溢れるモノレール路線
を紹介する。

■上野動物園

日本初の動物園として1882年に開園した上野動物園は来園者も
日本で最も多い。正門は当初、東京藝術大学に隣接した位置にあり
戦後初めて象がやってきた際にも旧正門から入園していた。また京
成線の博物館動物園駅(現在廃止)は、開業時には本駅舎とは別に
旧正門に隣接した地点に「動物園口」が設置されていた(昭和40
年代に閉鎖)現在の正門はJR上野駅公園口から続く並木の延長上
に設けられている。
■上野懸垂線・東園駅

上野動物園に入園するとパンダ棟や象の姿が目に入る。それらを眺
めつつ進むとサル山を過ぎた先に「モノレールのりば」と記された
建物に辿り着く。これが東園駅。上野動物園は、上野公園内に東園
(哺乳類等を展示)不忍池付近に西園(草食動物や鳥類等を展示)
を設けており、モノレールは両園を連絡する役割を持つ。
■上野懸垂線・東園駅

入口からスロープで下ると駅構内に着く。周囲を木々に囲まれてい
るため、やや暗い雰囲気であるが天井が高く開放感はある。ホーム
と走行路の間は安全柵で仕切られているが走行路はそのまま出口に
つながっており、むしろ乗降分離のための柵と言えよう。列車から
降りた乗客はそのまま走行路を歩き、写真手前側にある出口へ向か
う。その後、安全柵の扉が係員によって開放され、ホームの乗客が
乗り込む手順となる。
■上野懸垂線・東園駅

ホームは入口のスロープを下った先、走行路を越えた反対側にある。
走行路を乗客が渡る格好となり、つまり実に珍しい、モノレールの
踏切がここに存在する。日本でも恐らくここだけの存在であろう。
ただしこの踏切、警報機等は存在せず、列車通過の際は係員(左下
の麦藁帽子のおじさん)の制止によって通路が封鎖される。
■上野懸垂線・東園駅

れっきとした鉄道路線であるため、駅構内には他鉄道と同様に案内
標識が存在する。写真は駅名標であるが、よく見ると都営新宿線の
旧駅名標と同じデザインである。スロープ上に取り付けられている
ため、やや平行四辺形となっているのはご愛嬌。
■上野懸垂線・東園駅

れっきとした鉄道路線であるため、もちろん時刻表も存在する。し
かし一見、本数の多い様に思いながら時刻表を眺めると、実は殆ど
が不定期列車であり、定期列車が1時間に1本である事に驚かされ
る。平日や休日、また夏休みなどで入園者数が大幅に変動するため
で、遊覧鉄道ならではの措置。なお終電は陽も暮れる前の夕方4時
23分。これは閉園が4時半であるため。また休園日は運休となる。
■40形車両

上野懸垂線の4代目車両。初のVVVF制御車両である。路線があ
まりに短いため、1編成のみの存在。日中にしか走らないためライ
トは使用されず、代わりに注意喚起として車体上部の回転灯を点灯
させる。モノレールの車体は開業当初から一貫して日本車輌による
製造。開業時のH形車両は「未来の電車」を表現した、UFOを思
わせる銀色の車両であった。H形車両は廃車の後、日本車輌豊川製
作所にて保存されている。
■東園駅を出発するモノレール

発車ベルが鳴ると、音楽風の警笛(ミュージックホーン)を奏でな
がらモノレールは出発する。路線は暫らく東園の西端を進む。走行
路のすぐ右脇には公道(動物園通り)が併走し、民家や旅館も付近
に林立するが、走行路沿いには木々が生い茂り、あたかも森の中を
進む雰囲気。東京の都心部でしかも都市交通のイメージが強いモノ
レールがこの様な鬱蒼とした木々の中を走るのは実に不思議な感覚。
■東園の園内を進むモノレール

東園駅構内から続いたコンクリートの道床が途切れると一旦宙に浮
いたような感覚となり金網に囲まれた通路を越える。この通路は動
物園の従業員専用通路で、西園へとつながっている。専用通路を越
えると再び、盛り土による道床が現れる。
■東園の園内を進むモノレール

路線は僅か300mの距離であるが、列車は思いのほか遅いスピー
ドで進み、木々で視界も遮られているため、あたかも結構な距離を
走行している様な錯覚を覚える。モノレール走行路の左脇には東園
と西園を結ぶ連絡通路が併走するが、通路は走行路よりも高い位置
にあり、走行路は掘割の雰囲気。ただしコンクリートの壁面はさす
がに殺風景で、そのためか壁面には動物のイラストが描かれ楽しい
雰囲気となる。
■東園の園内を進むモノレール

動物の壁画が途切れるとさらに木々が鬱蒼としてくるが、その先に
は太陽光がこぼれる。列車の底面すれすれに続いていた道床もここ
で途切れる。この先、列車は右に旋回する様に急曲線を進み、車窓
はようやく視界が開け、車内は一気に明るくなる。
■動物園通りを越えるモノレール

鬱蒼とした木々から抜け出すと、正面には東園と西園を結ぶ歩道橋
「いそっぷ橋」が見える。直下の動物園通りと交差するが、上野と
根津を結ぶこの道路、過去には都電が併走しており昔のモノレール
の写真にはこの都電の線路も確認する事が出来る。現在、線路跡の
一部は「こども動物園」の敷地となっている。また動物園通りの根
津方面、不忍通りとの交差部(池之端七軒町電停跡)には、近年に
なって都電7500形が展示された。
■西園に進入するモノレール

急曲線を進むと、不忍池が目に入る。列車は引き続き急曲線を進み
ほぼ180度、進行方向を変える。眼下には、不忍池の他に遠足と
思われる園児たちがお弁当を広げている姿や園内の動植物を写生し
ている団体の姿がよく見受けられる。
■西園駅に到着するモノレール

わずかな直線区間を進むと、程なく西園駅が見えてくる。ミュージ
ックホーンを奏でながら右にカーブすると西園駅到着。300mと
いう路線長ながら、変化に富んだ車窓となりさすがに所要時間2分
では短いのか、降りるのを嫌がる子供も多い。かく言う作者も幼少
時代は、ご多分に漏れない子供であったが。
■上野懸垂線・西園駅

不忍池に隣接する西園駅。動物園の池之端門からも近いが、池之端
門は千代田線根津駅を利用する来園客以外に利用は無く閑散として
おり、西園駅も降客に対して乗客はごく僅か。地平駅である東園駅
とは違い西園駅は2階建ての高架駅。バリアフリー対策としてエレ
ベーターも設置されている。なお余談であるが、開業時は現在とは
駅名が異なり、東園駅は「本園駅」西園駅は「分園駅」と呼ばれて
いた。
■動物園内、不忍池付近を進むモノレール

上野懸垂線は、東京都が都電に代わる新しい交通機関を模索してい
た際に、その実験線として1957年、上野動物園内に敷設された
経緯がある。これは日本初のモノレールであり、世界でも2番目に
古い歴史的な路線である。走行桁は当時世界唯一のモノレールであ
ったドイツのモノレールの方式(ランゲン式)を参考にしている。
実験の終了後に撤去予定であったこの路線は、お猿電車に代わる動
物園の人気施設として定着したため存続となった。